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二次創作に関することを中心に後ろ向きに呟いております
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 いつからこんなことを続けていたのだろう。
まだ互いに、愛を告げることすらしていないというのに。




エイロネイア







 数週間前のことだった。影も伸びきって闇に溶け切るような時間まで、ひとり思いつめた表情で壁打ちに励んでいる忍足に、そろそろ上がれと声をかけてやった。そうしたら重い瞳(そう、深い深い海の底のような、煌きすら感じさせない暗く濡れた重い瞳、あんな瞳を俺は見たことがない)で此方を見て、少し経ってから頷かれた。
誰もいなくなった部室で、何となく俺は忍足がシャワーから上がるのを待っていた。さっさと帰ってしまっても良かった。それなのにどうにもその日は妙な感覚がして、俺は携帯を弄りながらぼんやりと待っていた。

「――あれ、」

シャワールームから出てきた忍足は、ソファで脚を組んでいる俺を見て一瞬惑ったような表情を見せた。それはすぐに消えて、微笑に変わった。

「待っててくれたん」
「まあな。することもねえし」
「そ」

そのまま俺の隣に腰をおろして、タオルで濡れた髪を拭く。俺は忍足の日に焼けた腕を何気なく見た。シャワーの熱で上気した頬を。少し重たいような髪を。邪魔そうな前髪を。そして、眼鏡越しでない瞳を。忍足はやがて俺の視線に気づいたのか、何なん、と言ってまた笑った。俺は別に、と小さく答えて、また手もとの携帯に目線を落とした。先ほどから、メールは一通も来ていない。
しばらく布の擦れる音だけがしていたが、やがて忍足がタオルを適当に丸め、部室は静かになった。そのまま俺たちはなぜか、二人とも腰を上げようとしなかった。妙な沈黙だった。俺はなぜか携帯から目線を逸らさなかったし、忍足は黙ってどこか一点を見つめているようだった。俺は待ち受け画面をたっぷり五分睨んだ後、ようやくパチリと携帯を閉じた。それでもなぜか、ソファからは立ち上がれなかった。
――先に口を開いたのは、あいつだった。

「なあ、跡部」
「なんだ」
「驚かんで聞いてくれる」
「――ものによるが」
「俺な」

そこで俺はようやく忍足をまともに見た。そしてどきりとした。暗く濡れたような瞳は痛いほどに俺を見つめていて、俺は全く動けなかった。最初、泣き出しそうな顔をしているのかと思った。思いつめて思いつめて、溜めてため込んだものが張り裂けそうな、そんな表情をしているのだと思った。しかしすぐに、忍足の表情は嗤うようなものに変わった。(一体何を嗤っていたんだ、手前は)
忍足は微かな吐息に乗せて笑った。その僅かな空気の揺らぎを肌で感じるほどの、妙な緊張があった。

「俺な、――ゲイやねん」

そう言って忍足は、嗤った顔の向こうで、酷く傷ついたような顔をしていた。

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