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二次創作に関することを中心に後ろ向きに呟いております
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 うだるような暑さの中、僕は団扇を片手に黙々と書類を片付けていた。縁側から侵入した陽光が僕の身体を灼き、じりじりと畳を暖める。黄色くなってしまった畳は更に日光を反射して、部屋を蒸し風呂のようにしていた。蝉の鳴き声は途切れることなく、僕はむしゃくしゃしてぴしゃりと障子を閉めた。一時の薄暗さを手に入れたが、籠った熱気だけはどうすることも出来なかった。ふと気がつけば、隣で作業をしていたはずの一角はどこかへ消えていた。



(いつだってそうだ)



 やっつけ気味に書類に筆を走らせる。澱んだ空気に噎せそうになった。君は僕を残して行ってしまう。ついていこうと追い付こうと必死になる僕を気にもとめず、遠いところに行ってしまう。汗が顎を伝って、書類にぽとりと染みを作った。



(ねえ、君は何処へ行ってしまうの)



 死んでしまうほど暑い筈の部屋の中で、僕はぞくりとした寒気に襲われた。進んだ先に死が待っているとしても、何の躊躇いもなく君は飛び込んで行くのだろう。筆をぐりぐりと押し付けると、文字がじわりと滲んだ。僕の存在は君にとって枷にすらならないのだろう、僕はとてもちっぽけで、君に気付かれることもなく、ただ、



「弓親、」



 障子越しにくぐもった声がした。はっとして障子を開けると、眩しい日光に瞳を衝かれ、くらりとした。日光はすぐ僕を呼んだ男の影に隠された。一角が妙な顔をして僕を見ていた。



「こんな暗くして、何やってんだ」

「君こそ、」

「そんなことより、ほれ」



 僕の言葉を遮り、一角は僕の目の前に何かを突き出した。近さに焦点を合わせるまもなくそれを受けとると、ひやりと冷たかった。



「日番谷隊長から貰ってきたんだ。食えよ」



 そして僕の頭を一つくしゃりと撫でると、するりと部屋に滑り込み、一角は何事もなかったように書類に向き合っていた。言いそびれた文句のやり場に困り、僕は受け取った氷を一口含んだ。冷たさと微かな甘味が口に広がり、吐き気も苛立ちもすうと治まる。



(嗚呼、…ずるい)



 どうだ、美味いだろと笑いかける一角に、僕はほんの小さく頷いた。





+++



考えすぎ
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