二次創作に関することを中心に後ろ向きに呟いております
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かきかけ
明日地球は亡くなってしまうらしい。地球の恋人と謳われる月が間もなく軌道上を外れ、こちらに接近してくるのだそうだ。今まで特殊な磁場を築いていた月が亡くなる所為で、地球を遠巻きにしていた小惑星群が次々にこの青い星に飛び込んでくるという。俺はテレビのチャンネルを変えた。どの番組も同じ放送ばかりを繰り返していた。
「地球は、我々は、いったいどうなってしまうというのでしょうか!」
「ああ、私たちの明日はいったい、いったい!」
「皆さん、あきらめてはいけません!きっと希望がどこかにあるはずです」
俺はテレビを消した。それから、昨日一晩じっくり充電をした、使い古した携帯電話を取り出す。ケータイなどと呼ぶにはあまりにもごつごつした、『化石』と呼ばれるような類の携帯電話。テレビもカメラもついていないと言ったら、友人(いや、悪友)に鼻で笑われた。とうの昔に容量の限界を迎えたアドレス帳を呼び出す。最近のケータイには数千件とアドレスが入るらしい。その二分の一にも満たない件数しか入っていないが、俺の携帯電話はもういっぱいいっぱいだった。
我ながら几帳面に分類されたデータを、丹念に読んでいく。家族。友人。学校。バイト。一番最初に目についた友人に電話をかけてみようと思った。カチカチと、室内に俺がボタンを押す音だけが響く。外はずいぶん騒がしいようだった。先ほどから金切り声にむせび泣く声に、子供の喚く声、どなり散らす声、狂ったような笑い声までなんでも聞こえてくる。俺は換気のために開け放していた窓をきっちり閉めた。
機械を耳に当てる。あまりに無機質で、規則的な呼び出し音がスピーカーから聞こえてくる。俺は目を閉じて相手を待った。ガラスの割れる音が遠くから聞こえた。車のクラクションが姦しく響く。俺は耳を機械から離さぬよう気をつけながら、カーテンまで閉めると、布団を引っ張り出してきて、その中に潜り込んだ。外はあまりにも騒がしかった。
『――もしもし?』
「あ、俺だ、俺。ニュース見たか」
『ああ――なんだ、詐欺の電話か?』
十一回目のコール音は、聞きなれた友人の声が取って代わった。いつもキャスケットを被っているあの友人だ。俺は笑った。他愛もないことを話した。何分会話しただろうか、何十分話ができただろうか。『じゃあそろそろ切るな』と言われた時に、心底顔が見たいと思った。俺の携帯電話がケータイでないことを心から悔んだ。
「地球は、我々は、いったいどうなってしまうというのでしょうか!」
「ああ、私たちの明日はいったい、いったい!」
「皆さん、あきらめてはいけません!きっと希望がどこかにあるはずです」
俺はテレビを消した。それから、昨日一晩じっくり充電をした、使い古した携帯電話を取り出す。ケータイなどと呼ぶにはあまりにもごつごつした、『化石』と呼ばれるような類の携帯電話。テレビもカメラもついていないと言ったら、友人(いや、悪友)に鼻で笑われた。とうの昔に容量の限界を迎えたアドレス帳を呼び出す。最近のケータイには数千件とアドレスが入るらしい。その二分の一にも満たない件数しか入っていないが、俺の携帯電話はもういっぱいいっぱいだった。
我ながら几帳面に分類されたデータを、丹念に読んでいく。家族。友人。学校。バイト。一番最初に目についた友人に電話をかけてみようと思った。カチカチと、室内に俺がボタンを押す音だけが響く。外はずいぶん騒がしいようだった。先ほどから金切り声にむせび泣く声に、子供の喚く声、どなり散らす声、狂ったような笑い声までなんでも聞こえてくる。俺は換気のために開け放していた窓をきっちり閉めた。
機械を耳に当てる。あまりに無機質で、規則的な呼び出し音がスピーカーから聞こえてくる。俺は目を閉じて相手を待った。ガラスの割れる音が遠くから聞こえた。車のクラクションが姦しく響く。俺は耳を機械から離さぬよう気をつけながら、カーテンまで閉めると、布団を引っ張り出してきて、その中に潜り込んだ。外はあまりにも騒がしかった。
『――もしもし?』
「あ、俺だ、俺。ニュース見たか」
『ああ――なんだ、詐欺の電話か?』
十一回目のコール音は、聞きなれた友人の声が取って代わった。いつもキャスケットを被っているあの友人だ。俺は笑った。他愛もないことを話した。何分会話しただろうか、何十分話ができただろうか。『じゃあそろそろ切るな』と言われた時に、心底顔が見たいと思った。俺の携帯電話がケータイでないことを心から悔んだ。
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