二次創作に関することを中心に後ろ向きに呟いております
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「アタシが女のコに生まれてたら、」
ワインレッドの髪を夜風に靡かせて、死神は満月を見上げた。ぞくりとするほど蒼い月光が辺りを支配する中で、真っ赤なシルエットだけが浮かび上がる。黒い執事は黙って死神の後ろ姿を見守った。教会の屋根は一際風を受けやすい、悪魔である彼にとって特に問題はないが、それでも少し肌寒い夜だった。
(こんな夜は、死神でも、感傷的になるのだろうか、)
乾いた唇をぺろりと舐めて、執事は死神の言葉を待った。
「――セバスちゃんもウィルも、アタシのこと好きになっていてくれたかしら」
「ご自身の性格が問題だとは、思わないんですか、」
「あら、心外ね」
死神は笑った。セバスチャンは二歩ほど彼との距離を詰めた。この距離であれば確実に仕留めることが出来るだろう。そんな執事に構わず、グレルは変わらず蒼い月を見上げていた。
「アタシは女に生まれ変わったとしても、アタシのままだわ。
こればっかりはどうしようもない。
アタシはこういう人間、あ、死神なのよ」
その言葉は存外に冷静な響きで執事の耳に届いた。きっぱりとそう言い切った彼を、ほんの僅かにでも羨ましいと感じた自分に気がついて、セバスチャンは己が心を疑った。
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